経歴書を読むとき、肩書や在籍年数と同じくらい気になるのが「この人は、どれだけ多くの人と組んで仕事をしてきたか」です。社内の別部署、取引先、外部の専門家、立場の違う上司や部下。関わってきた相手の数と幅は、その人が持ち込める情報や、困ったときに頼れる先の多さにそのまま表れます。
- いつも同じメンバーとしか仕事をしておらず、部署の外に相談できる人がいない。
- 異動や転職のたびに人間関係がゼロからになり、前の職場のつながりが途切れてしまう。
- 人脈づくりと聞くと、名刺交換や飲み会のような気の進まない場面ばかりが浮かぶ。
- 採用面接で「多くの人と協働してきた人」を見分けたいが、何を聞けばよいか分からない。
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人と関わる力は、生まれつきの社交性だけで決まるものではありません。どんなつながりが仕事の機会を運んでくるのかを知り、関係を長く保つ習慣を持ち、一人ひとりとの接し方を整えれば、後から伸ばせます。社会学のネットワーク研究から、キャリア論、対人関係の古典、チームづくりの実践書まで、その三つを順に学べる25冊を選びました。
25冊の選び方:人数より「どんな人とつながっているか」を学べる本
選んだ条件は三つです。一つ目は、人とのつながりと仕事の成果の関係を、調査やデータで確かめた研究か、その知見を実務に落とした本であること。二つ目は、日本語で手に入ること。三つ目は、読んだあとに自分の働き方で試せる行動が一つ以上残ることです。
ネットワーク研究には、関わった人の延べ人数よりも、つながっている相手の種類のほうが仕事の機会を左右するという知見が積み重なっています。そのため、人脈を増やすノウハウ本だけでなく、つながりの構造を説明する研究書も多めに入れました。
| 分野 | 冊数 | 読むと分かること |
|---|---|---|
| つながりがキャリアに効く仕組み | 5冊 | 仕事の機会がどんな相手から届くのか、研究の結論 |
| 人が関われる数と、つながりの広がり方 | 6冊 | 関係を保てる人数の上限と、ネットワークの形 |
| つながりをキャリアの資産として育てる | 6冊 | 転職や異動をまたいで関係を保ち、機会に変える方法 |
| 一人ひとりとの関わり方を磨く | 6冊 | 信頼される接し方、頼み方、問いかけ方 |
| チームと組織の中で関わる | 2冊 | 部署や会社の垣根を越えて協働するときの考え方 |
書誌は2026年10月時点で確認した版です。紙版と電子版、旧版と新版で出版社や価格が変わる本があるため、購入前に版をご確認ください。
つながりがキャリアに効く仕組みを知る5冊
「顔が広い人は得をする」という感覚には、研究の裏付けがあります。ただし、得をする理由は単純な人数ではありません。最初の5冊で、どんな関係から仕事の情報や機会が届くのかを押さえます。
1. 転職:ネットワークとキャリアの研究|弱いつながりが仕事を運ぶ
書誌:マーク・グラノヴェッター 著(渡辺深 訳)。ミネルヴァ書房、1998年。ISBN 9784623029785。
米国の専門職・技術職・管理職の転職者を調べ、新しい仕事の情報を誰から得たかを分析した研究です。よく会う親しい友人よりも、たまにしか会わない知人を通じて職を得た人が多いという結果は、のちに「弱い紐帯の強さ」として広く知られるようになりました。
親しい友人は自分と同じ情報を持っていることが多く、たまに会う知人は自分の知らない業界や会社の話を運んでくる、という説明が核心です。昔の同僚や一度だけ一緒に仕事をした取引先との関係を、細くても切らさずにおく理由がここにあります。
学術書なので統計や先行研究の整理に多くのページが割かれています。結論だけを急ぐなら、序章と結論の章を先に読み、気になった箇所を本文で確かめる読み方が向いています。
2. 競争の社会的構造|集団と集団の間に立つ人が得をする
書誌:ロナルド・S・バート 著(安田雪 訳)。新曜社、2006年。ISBN 9784788510180。
互いにつながっていない二つの集団の間には「隙間(構造的空隙)」があり、その隙間をまたいでつながっている人が、情報と交渉の両面で有利になると論じた理論書です。
この理論に照らすと、関わった人数が同じ100人でも、全員が同じ部署の人であるのと、営業・開発・取引先・業界団体に散らばっているのとでは価値が違います。自分の人脈を書き出したときに、所属ごとに固まっているか、橋渡しになっている相手がいるかを点検する視点が得られます。
数式を含む理論の展開が中心で、読み通すには時間がかかります。訳者の安田雪さんが一般向けに書いた4番の本を先に読んでから戻ると、主張の筋が追いやすくなります。
3. ソーシャル・キャピタル|つながりを「資本」として捉える
書誌:ナン・リン 著(筒井淳也、石田光規、桜井政成ほか 訳)。ミネルヴァ書房、2008年。ISBN 9784623051151。
人とのつながりを通じて手に入る資源を「社会関係資本」と定義し、それが職業上の地位の達成とどう結びつくかを理論立てて説明した本です。誰とつながっているかだけでなく、その相手がどんな資源(情報、影響力、地位)を持っているかに注目します。
グラノヴェッターやバートの研究を一つの枠組みの中に位置づけ直しているので、1番と2番を読んだあとに読むと、研究同士の関係が整理されます。
理論書であり、実務の手順は書かれていません。自分のキャリアに当てはめるときは、「困ったときに頼れる人が、どの分野に何人いるか」を数えてみる程度の使い方から始めるのが現実的です。
4. 人脈づくりの科学|ネットワーク分析を日本の職場の言葉で
書誌:安田雪 著。日本経済新聞社、2004年。ISBN 9784532311564。
ネットワーク分析の研究者が、弱い紐帯や構造的空隙といった考え方を、日本のビジネスパーソン向けに書き下ろした本です。研究書の結論を、社内の人間関係や転職の場面に引き寄せて説明しています。
「人脈」という言葉につきまとう打算的な印象から離れて、関係の構造を図として眺める習慣がつきます。自分と周囲の人を点と線で描き、線が集中している人、どこにもつながっていない人を見つける作業は、この本を読んだその日から試せます。
刊行から年数がたっているため、SNSやオンライン会議を前提とした話はありません。構造の考え方は今の働き方にもそのまま当てはまります。
5. 世界標準の経営理論|ネットワーク理論を経営学の地図の中で読む
書誌:入山章栄 著。ダイヤモンド社、2019年。ISBN 9784478109571。
経営学で使われている主要な理論を、経済学・心理学・社会学の三つの系統に分けて解説した大著です。社会学の系統の中に、弱いつながり、構造的空隙、ソーシャルキャピタルを扱う章があり、1番から3番の研究がどんな経営の問いに使われているかが分かります。
イノベーションや人材の流動化の文脈で、ネットワーク理論がどう応用されているかまで書かれているのが、ほかの本にない点です。人事や組織づくりに関わる方なら、社員の社外とのつながりを会社がどう扱うかを考える材料にもなります。
800ページを超える厚さなので、通読する必要はありません。目次から社会学ディシプリンの章を選んで読み、残りは辞書のように使うのが向いています。
関われる人数と、つながりの広がり方を知る6冊
多くの人と関わるといっても、一人が深い関係を保てる人数には限りがあります。この6冊では、関係の上限と、つながりが網の目のように広がる仕組みを学びます。
6. つながり|友人の友人の、そのまた友人まで影響が届く
書誌:ニコラス・A・クリスタキス、ジェイムズ・H・ファウラー 著(鬼澤忍 訳)。講談社、2010年。ISBN 9784062147705。
米国の長期健康調査のデータを使い、肥満や喫煙、幸福感といった状態が、人のつながりを通じて広がっていく様子を分析した本です。影響はおおむね「3次の隔たり」、つまり友人の友人の友人まで届くという結果を示しています。
仕事に置き換えると、直接知っている人だけでなく、その先の人たちの働き方や考え方も自分に流れ込んでいるということです。どんな人たちの輪の中に身を置くかが、自分の行動を少しずつ変えていきます。
健康や行動の伝播を扱った話が多く、キャリアを直接論じた章は多くありません。ネットワークの中で人がどう影響し合うかを理解するための本として読むと、得るものが大きくなります。
7. 友達の数は何人?|安定した関係を保てるのは約150人
書誌:ロビン・ダンバー 著(藤井留美 訳)。青土社、2025年。ISBN 9784791776993。2011年にインターシフトから刊行された邦訳が、青土社から改めて出ています。
霊長類の脳の大きさと群れの規模の関係から、人が安定した関係を保てる人数はおよそ150人だと示した「ダンバー数」の本です。150人の中にも、ごく親しい5人、親しい15人、友人の50人という層があると説明しています。
多くの人と関わってきた人ほど、すべての関係を同じ濃さで保とうとすると時間が足りなくなります。深く付き合う少数と、年に一度連絡を取る程度の多数を分けて考える根拠として、この層の考え方が役立ちます。
進化心理学の話題が幅広く並ぶエッセイ集の性格が強く、仕事の人間関係だけを扱った本ではありません。数字の根拠を知る目的で、ダンバー数に触れた章から読むのが効率的です。
8. 私たちはどうつながっているのか|ネットワーク科学を新書1冊で
書誌:増田直紀 著。中公新書、2007年。ISBN 9784121018946。
スモールワールド、ハブ、クラスターといったネットワーク科学の基本用語を、人間関係や感染症、インターネットの例を使って説明した入門書です。数式を使わずに、つながりの形が何を左右するかを理解できます。
9番と10番の翻訳書を読む前に、用語と全体像をこの本で押さえておくと、読み進めるのがかなり楽になります。新書なので、通勤の往復で読み切れる分量です。
個人の人脈づくりの方法は書かれていません。つながりの仕組みを知るための基礎体力をつける本として位置づけてください。
9. 新ネットワーク思考|つながりはなぜ一部の人に集まるのか
書誌:アルバート=ラズロ・バラバシ 著(青木薫 訳)。日本放送出版協会(現NHK出版)、2002年。ISBN 9784140807439。
すでに多くのつながりを持つ点ほど、新しいつながりを得やすいという「優先的選択」によって、少数のハブに線が集中する仕組みを説明した本です。インターネットや細胞、企業間の取引など、さまざまなネットワークに同じ形が現れることを示しています。
職場でも、すでに顔の広い人のところに新しい相談や紹介が集まりやすい現象があります。最初の数人と丁寧な関係を築くと、その先のつながりが加速度的に増えていく理由が、この本の説明で腑に落ちます。
物理学者が書いた科学読み物なので、ビジネスへの応用は読み手が考える部分が残ります。
10. スモールワールド・ネットワーク|「世間は狭い」を数理で説明する
書誌:ダンカン・ワッツ 著(辻竜平、友知政樹 訳)。ちくま学芸文庫、2016年(増補改訂版)。ISBN 9784480097378。
知り合いをたどると、世界中の誰とでも数人を介してつながっている。この「6次の隔たり」と呼ばれる現象を、少数の遠くへ伸びるつながりがあれば成り立つことを示したスモールワールドモデルの解説書です。
普段は近い人とだけ付き合っていても、数本だけ遠くへ伸びる関係を持っていれば、届く範囲が一気に広がります。異業種の勉強会や社外の副業で得た一本のつながりが大きな意味を持つ理由を、モデルで理解できます。
研究の歩みを追う章が長く、結論だけを知りたい読者には回り道に感じられるかもしれません。8番で全体像をつかんでから読むと迷いません。
11. ソーシャル物理学|職場の会話データが成果を予測する
書誌:アレックス・ペントランド 著(小林啓倫 訳)。草思社文庫、2018年。ISBN 9784794223579。
MITの研究チームが、社員にセンサーを身につけてもらい、誰と、どれくらい、どんなふうに話したかを記録した研究の本です。チームの中での活発なやりとりと、チームの外から新しい情報を持ち込む探索の両方が、生産性や創造性と結びついていたことが示されています。
同じ時間帯に休憩を取るようにしただけで、コールセンターのやりとりが増え成果が上がった例など、関わる機会の設計で結果が変わる話が具体的です。人と関わる力を、個人の性格ではなく職場の仕組みの問題として考える視点が得られます。
データの取り方には職場への導入のハードルがあり、そのまま真似できる手順書ではありません。会議の設け方や席の配置を見直すときの考え方として使うのが現実的です。
つながりをキャリアの資産として育てる6冊
ここからは、研究の知見を自分のキャリアにどう生かすかを扱う本です。転職や異動をまたいで関係を保ち、新しい機会に変えていく方法を学びます。
12. スタートアップ的人生(キャリア)戦略|人脈を自分の事業の資産と考える
書誌:リード・ホフマン、ベン・カスノーカ 著。ニューズピックス、2022年。ISBN 9784910063263。原書『The Start-up of You』の新版の邦訳です。
LinkedInの共同創業者が、個人のキャリアをスタートアップの経営になぞらえて書いた本です。自分の強みと市場の需要を見極め、計画を何段階も用意しておき、その計画を支えるものとして人のネットワークを育てる、という考え方が軸になっています。
直接の知人だけでなく、知人の知人という2次・3次のつながりを意識して機会を探す方法や、関係を保つために自分から先に役立つ情報を渡す習慣など、すぐに試せる行動が多く書かれています。
米国の転職市場を前提にした事例が中心です。日本の会社で働く場合は、社内異動や部署横断のプロジェクトに置き換えて読むと、使える部分が増えます。
13. ALLIANCE アライアンス|辞めた後もつながり続ける関係
書誌:リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、クリス・イェ 著(篠田真貴子 監訳、倉田幸信 訳)。ダイヤモンド社、2015年。ISBN 9784478062579。
会社と社員の関係を、終身の約束ではなく、期間と目的を決めた「信頼で結ばれた提携」として結び直す提案の本です。社員が持つ社外の人脈を会社の情報源として生かすことや、退職者とのつながりを保つアルムナイ・ネットワークの作り方が具体的に書かれています。
個人の側から読むと、一つの会社にいる間に社内外で関わった人の多さが、次の仕事にもそのまま持ち越される資産になるという見方が手に入ります。会社の側から読むと、社員の人脈を制限するより後押しするほうが会社に情報が集まる理由が分かります。
業務委託の人材との長い関係づくりにこの考え方を当てはめた例は、業務委託の優秀な人材と長期的な関係を築く「アライアンス」という方法で紹介しています。
14. LIFE SHIFT|多様なつながりは「変身資産」になる
書誌:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著(池村千秋 訳)。東洋経済新報社、2016年。ISBN 9784492533871。
人生が100年に延びると、一つの会社、一つの職業で働き続ける前提が崩れます。この本は、お金以外の「無形資産」として、スキルや評判などの生産性資産、健康や良好な家族関係などの活力資産、そして新しいステージへ移るための変身資産の三つを挙げています。
変身資産の中身として挙げられているのが、自分を知ることと並んで、多様性に富んだ人的ネットワークです。今の仕事の外にいる人たちとのつながりが、転身のときに新しい役割を試す場を与えてくれる、という説明は、多くの人と関わる意味を長い時間軸で捉え直させてくれます。
年金や資産形成の試算にもページが割かれており、人間関係の話は全体の一部です。無形資産を扱った章を中心に読むと、本記事のテーマに沿った読み方になります。
15. ハーバード流キャリア・チェンジ術|新しい人との出会いが転機をつくる
書誌:ハーミニア・イバーラ 著。翔泳社、2003年。ISBN 9784798103860。
キャリアを大きく変えた人たちを調べ、転機はじっくり自分を見つめ直した末に訪れるのではなく、小さな実験を重ね、新しい人と出会う中で形になっていくと論じた本です。
今の職場の人間関係は、今の自分の役割を前提にしています。違う働き方を試したいときほど、その外にいる人とつながる必要がある、という指摘は、関わる相手の幅を意識的に広げる理由をはっきりさせてくれます。
刊行年が古く、紹介される事例も2000年前後のものです。考え方の部分は今でもそのまま使えますが、転職市場の情報として読む本ではありません。
16. その幸運は偶然ではないんです!|出会いを機会に変える5つの行動特性
書誌:J・D・クランボルツ、A・S・レヴィン 著(花田光世、大木紀子、宮地夕紀子 訳)。ダイヤモンド社、2005年。ISBN 9784478733240。
キャリアの転機の多くは予期しない出来事から生まれ、その偶然は好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心という五つの行動によって起こりやすくできる、という「計画的偶発性理論」をまとめた本です。
紹介される事例の多くは、たまたま話した相手や、引き受けた頼まれごとから道が開けた話です。多くの人と関わってきた人ほど、そうした偶然に出会う回数が増えます。誘いを一度は受けてみる、知らない分野の人に質問してみる、といった具体的な行動に落とし込めるのがこの本のよさです。
各章に練習問題があり、読みながら自分の経験を書き出す構成になっています。読むだけで終えず、書き込みながら進めると効果が出やすい本です。
17. 働くひとのためのキャリア・デザイン|節目で人に支えられる
書誌:金井壽宏 著。PHP新書、2002年。ISBN 9784569619415。
キャリアは節目ごとに意識して選び、それ以外の時期は流れに任せてよい、という考え方を、日本の会社員の実例とともに説明した本です。節目で相談に乗ってくれる人、手本になる人の存在が、何度も繰り返し語られます。
海外の翻訳書が多いこの分野で、日本の職場の空気を前提に書かれているのが選んだ理由です。上司や先輩、社外のメンターとの関係が、どの場面でキャリアを支えるのかを具体的に思い描けます。
理論の紹介が中心で、人脈を広げる手順は書かれていません。12番や16番と合わせて読むと、考え方と行動の両方がそろいます。
一人ひとりとの関わり方を磨く6冊
関わる人数を増やすほど、一人ひとりとの関係の質が問われます。この6冊は、信頼される接し方、頼みごとの仕方、相手の話の聞き方を扱っています。
18. GIVE & TAKE|与える人が長い目で見て成功する
書誌:アダム・グラント 著(楠木建 監訳)。三笠書房、2014年。ISBN 9784837957461。
人を、受け取る以上に与えるギバー、与えるより多く受け取ろうとするテイカー、損得を釣り合わせようとするマッチャーの三つに分け、長い目で見て成果を上げるのはギバーだという研究結果を紹介した本です。
人と関わる力の観点で役に立つのは、しばらく連絡を取っていなかった昔の知人に声をかけると、今の親しい人からは得られない新しい情報が手に入りやすいという話です。過去に一緒に働いた人の数が多い人ほど、この休眠中の関係が大きな資産になります。5分で済む手助けを惜しまない、という習慣も具体的です。
与えすぎて燃え尽きるギバーについても一章を割いています。頼まれごとを全部引き受けるのではなく、相手を選び、自分の時間を守りながら与える線引きも学べます。
19. 一生モノの人脈力|関係を保つための習慣
書誌:キース・フェラッジ、タール・ラズ 著(森田由美 訳)。パンローリング、2012年。ISBN 9784775941089。
原題は『Never Eat Alone(一人で食事をするな)』。人と会う機会をつくり、会った後に連絡を続け、相手の役に立つことを先にする、という人脈づくりの習慣を、著者自身の経験とともに書いた実践書です。
会った翌日に短いお礼を送る、相手の関心事を覚えておき関連する情報を届ける、といった行動が細かく書かれています。研究書を読んで「つながりが大事なのは分かったが、何をすればよいか分からない」と感じた人に向いています。
米国の営業職らしい押しの強い手法も含まれています。日本の職場では、そのうち自分の性格や業界の慣習に合うものだけを選んで取り入れるのがよいでしょう。
20. 人を動かす|人と関わるときの基本原則
書誌:デール・カーネギー 著(山口博 訳)。創元社(文庫版)、2016年。ISBN 9784422100982。
批判しない、相手の名前を覚える、相手の関心を話題にする、心から褒める。原書の刊行から80年以上読み継がれている、対人関係の原則をまとめた古典です。
原則そのものは当たり前に見えますが、各原則に添えられた実話を読むと、自分がどれだけ守れていないかに気づかされます。初対面の人と関わる機会が多い仕事ほど、こうした基本の差が後の関係に効いてきます。
文庫版は持ち歩きやすく、章ごとに原則が要約されているので、会議や面談の前に該当箇所だけ読み返す使い方ができます。
21. 影響力の武器[新版]|人が頼みごとに応じる心理
書誌:ロバート・B・チャルディーニ 著(社会行動研究会 監訳)。誠信書房、2023年。ISBN 9784414304299。
返報性、好意、社会的証明、権威、希少性、コミットメントと一貫性、そして新版で加わった一体性。人が依頼に応じるときに働く七つの原理を、実験と事例で説明した本です。
多くの人と仕事をする人は、頼む側にも頼まれる側にも頻繁に立ちます。先に相手の役に立っておくと頼みごとが通りやすくなる返報性や、同じ集団の一員だという感覚が協力を引き出す一体性は、部署や会社をまたいで協力をお願いするときに直接使える知識です。
悪用されると人を操る手口にもなるため、自分が不当に動かされそうになったときに気づく防御の知識としても読めます。旧版の第三版を持っている方は、一体性の章が加わった点が主な違いです。
22. 問いかける技術|立場の違う人と信頼を築く聞き方
書誌:エドガー・H・シャイン 著(金井壽宏 監訳、原賀真紀子 訳)。英治出版、2014年。ISBN 9784862761712。
組織心理学者のシャインが、相手に教えるより問いかけることを増やし、自分が知らないことを素直に認めて尋ねる「謙虚に問いかける」姿勢を説いた本です。
上司と部下、専門家と依頼者のように立場の差がある関係では、上の立場の人が話しすぎて、相手の持つ情報が上がってこなくなります。関わる相手の幅が広がるほど、自分の知らない領域の人と話す機会が増えるので、問いかけで相手の知識を引き出す技術がそのまま協働の質につながります。
200ページ弱と短く、例も具体的です。部下や後輩を持つ立場の方なら、翌日の1on1から試せます。
23. 急に売れ始めるにはワケがある|集団と集団をつなぐ「コネクター」
書誌:マルコム・グラッドウェル 著(高橋啓 訳)。SB文庫(ソフトバンククリエイティブ)、2007年。ISBN 9784797338126。
流行が一気に広がる転換点を扱った本で、その鍵を握る人物として、並外れて多くの人と知り合いであるコネクター、情報を集めて人に教えるメイヴン、人を説得するセールスマンの三種類を挙げています。
コネクターの章では、異なる世界にまたがって知り合いを持つ人が、情報や機会の流れの要所になる様子が描かれます。2番の構造的空隙の考え方を、人物の具体像として理解できる章です。
流行やマーケティングが本題なので、キャリアの本として読む場合はコネクターの章を中心に読めば十分です。
チームと組織の中で関わる力を発揮する2冊
最後の2冊は、個人ではなく組織の側から、人と人が関わる場の条件を考える本です。部下やチームを持つ方、人事や組織づくりを担う方に向いています。
24. チームが機能するとはどういうことか|その場でチームを組んで働く力
書誌:エイミー・C・エドモンドソン 著(野津智子 訳)。英治出版、2014年。ISBN 9784862761828。
固定したメンバーのチームではなく、プロジェクトごとに部署や会社の垣根を越えて人が集まり、すぐに協働を始める働き方を「チーミング」と呼び、その条件を論じた本です。率直に意見を言っても罰せられないと感じられる心理的安全性の考え方も、この本で詳しく扱われています。
多くの人と関わってきた人とは、言い換えれば、初対面の相手とも短期間で協働の形をつくれる人です。その力が個人の資質だけでなく、場のつくり方で引き出せることを、病院や建設現場の事例で示しています。
リーダーの立場から書かれた章が多い本です。メンバーの立場で読む場合は、自分が新しいチームに入ったときに何を確かめればよいかという観点で読むと使いやすくなります。
25. タテ社会の人間関係|日本の組織で横のつながりが育ちにくい理由
書誌:中根千枝 著。講談社現代新書、1967年。ISBN 9784061155053。
日本の集団は、職種や資格といった横の共通点ではなく、同じ会社や同じ職場という「場」によってまとまり、その中で上下の序列が強く働く。社会人類学者が半世紀以上前に示したこの分析は、今の職場にもかなり当てはまります。
部署の外や会社の外に知り合いを持ちにくいのは、個人の努力不足ではなく、組織の構造から来ている部分がある。そう分かると、横のつながりを意識的につくる必要性と、そのための場を会社が用意する意味が見えてきます。
書かれた時代が古く、終身雇用を前提にした記述が多い本です。そのぶん、今の組織がどこまで変わり、どこが変わっていないかを確かめる物差しとして読めます。
最初の5冊で、人と関わる力の土台をつくる
25冊すべてを読む必要はありません。最初に読む5冊として、次の順番をおすすめします。
- 4. 人脈づくりの科学:ネットワーク研究の考え方を日本語でつかむ。
- 1. 転職:たまに会う人からの情報が仕事の機会を運ぶことを、原典で確かめる。
- 7. 友達の数は何人?:深く付き合える人数に上限があることを知り、関係の濃さを分けて考える。
- 18. GIVE & TAKE:先に与える関わり方と、休眠中の関係を生かす方法を学ぶ。
- 12. スタートアップ的人生(キャリア)戦略:つながりを自分のキャリア計画に組み込む。
この順番だと、研究で「どんなつながりが効くのか」を理解してから、上限を知り、関わり方と使い方へ進めます。部下やチームを持つ立場の方は、5冊目を24番の『チームが機能するとはどういうことか』に替えてもかまいません。
よくある質問
関わった人の数を増やせば、キャリアは広がりますか
数だけでは広がりにくい、というのがこの記事で紹介した研究の多くに共通する結論です。同じ部署の人ばかり100人と知り合うより、営業、開発、取引先、業界の外というように異なる集団の人と数人ずつ関わっているほうが、新しい情報や機会が届きやすくなります。人数を数えるなら、所属ごとに分けて数えるのがおすすめです。
人見知りで、人脈づくりが苦手です
大勢と同時に話すのが苦手でも、関わる力は伸ばせます。18番の『GIVE & TAKE』が勧めるのは、昔の同僚に近況をたずねる短い連絡や、5分で終わる手助けのような小さな行動です。22番の『問いかける技術』のように、話すより聞くことを中心にした関わり方もあります。
採用面接で、多くの人と協働してきた人を見分けるには
「チームで働いた経験」を一般論で聞くより、特定のプロジェクトで誰と、何人と、どんな立場の人と関わったかを具体的にたずねるほうが実態が見えます。社外や他部署の人との調整で困った場面と、そのときに誰を頼ったかを聞くと、関わってきた相手の幅が分かります。経歴を深掘りする質問の組み立ては、面接で応募者の経歴や経験を引き出す質問で詳しく紹介しています。
学術書は難しそうです。どれから読めばよいですか
1番から3番は学術書で、読み通すには時間がかかります。まず4番の『人脈づくりの科学』か8番の『私たちはどうつながっているのか』で考え方をつかみ、気になった研究だけ原典に当たる読み方で十分です。
まとめ
どれだけ多くの人と関わって仕事をしてきたかは、キャリアの幅を映す指標になります。ただし効いてくるのは延べ人数より、異なる集団の人とつながっているか、そして一度できた関係を細くても保ち続けているかです。
読み始める前に、過去3年間で一緒に仕事をした人を思いつく限り書き出し、社内の同じ部署、社内の他部署、社外の三つに分けてみてください。どこかの欄がほとんど空なら、そこが次に関わりを広げる先です。書き出した中で1年以上連絡を取っていない人がいれば、近況をたずねる短い連絡を一通送るところから始められます。
採用の場面で人を見る観点を広げたい方は、良い人を採用する技術がわかる本25選もあわせてお読みください。面接の設計や応募者対応を社外に任せることも含めて採用の進め方を見直したい場合は、Coreの採用代行サービスをご確認ください。
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部署や会社の垣根を越えて働いてきた人を採りたいとき、面接で何を聞き、どう評価するかは会社ごとに変わります。今の選考の流れと評価の項目をうかがえれば、どこから見直すとよいかをお伝えします。
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