組織図を描いても、仕事が回るようにはなりません。箱と線は「誰が誰の上にいるか」を示すだけで、「誰が何を受け取り、どこまで判断し、終わったら誰に渡すか」は書かれていないからです。
業務改善やBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の現場では、仕事を「入力→処理→出力→次の工程」の連鎖として描きます。この見方を組織に当てると、役割は工程、責任は判断できる範囲、工数は各工程に割り当てる時間、引き継ぎは工程と工程の間の受け渡し条件になります。組織づくりの本を、この視点で読み直したのが今回の25冊です。
選んだ基準は三つです。Amazon.co.jpでレビューが多く読まれ続けていること、著者が経営者・研究者・実務家として実績を持つこと、海外の本は日本語訳が出ていること。原書しかない本は外しました。
BPMそのものを体系的に学びたい場合はBPMを学べる本おすすめ25選、採用の工程に絞って業務改善の名著を読みたい場合は採用の業務フローを改善する本おすすめ25選、等級制度の設計は組織づくりと等級制度がわかる本おすすめ30選にまとめています。
組織をプロセスとして読むための4つの層
25冊は、組織を「流れ」として設計するときに順番に決めていく4つの層に分けました。上の層が決まっていないと、下の層で何度やり直しても噛み合いません。
| 層 | 決めること | BPMで言えば | 該当する本 |
|---|---|---|---|
| 1. 土台 | 組織を流れとして見る考え方そのもの | プロセス志向・全体最適 | 1〜6 |
| 2. 役割と責任 | 誰がどの工程を持ち、どこまで判断できるか | 工程の定義・権限の割り当て | 7〜13 |
| 3. 連鎖 | 一人の行動が次の人の行動をどう呼ぶか | 受け渡し条件・指標のつながり | 14〜20 |
| 4. 各ポジションの技能 | その工程を担う人に何を学ばせるか | 工程ごとの要件定義 | 21〜25 |
経営者や組織の責任者なら1と2から、現場のマネジャーなら3と4から読み始めると、自分の持ち場に直結します。
第1層:組織を「流れ」として捉える土台
部門ごとの最適化を積み上げても会社全体の成果にはなりません。この層の6冊は、組織を部署の集合ではなく、価値を生む流れとして見るための考え方を扱います。
1. マネジメント[エッセンシャル版]|組織は目的のための道具である
P.F.ドラッカー/ダイヤモンド社/2001年
ドラッカーは組織を「社会の機能を果たすための機関」と定義し、組織の構造は事業の目的と戦略から導くものだと繰り返します。部門を先に作って仕事を割り振るのではなく、果たすべき成果から逆算して活動を束ねる。BPMで言う「プロセスはアウトプットから設計する」と同じ順番です。
第2部「マネジメントの方法」と第3部「マネジメントの戦略」にある、組織構造の7つの要件(明快さ、経済性、方向づけ、理解、意思決定、安定性と適応性、永続性と自己革新)は、組織図を評価するチェックリストとして今も使えます。経営者と組織企画の担当者が最初に読む1冊です。
2. 学習する組織|一人の判断が巡り巡って自分に返る構造を見る
ピーター・M・センゲ/英治出版/2011年
センゲが示すシステム思考は、出来事の連鎖を矢印で描く技術です。営業が受注を急ぐ、納期が詰まる、品質が落ちる、クレーム対応で営業の時間が奪われる、さらに受注を急ぐ。この循環は、どの部署の誰を責めても止まりません。構造を描いて初めて、どこに手を入れるかが決まります。
「ビール・ゲーム」の章は、小売・卸・工場の各担当が自分の持ち場で合理的に動いた結果、在庫が暴れる様子を追体験させます。部門間の受け渡しで起きる遅れと増幅を、担当者本人に理解してもらう教材としても使えます。
3. 組織デザイン|分業と調整の2軸で組織の形を決める
沼上幹/日本経済新聞出版(日経文庫)/2004年
組織設計の理論を、新書サイズで最も簡潔に整理した本です。組織とは「分業」と「調整」の組み合わせであり、機能別・事業部制・マトリクスの違いは、何を軸に分業し、どこで調整するかの違いにすぎない。この整理があると、組織変更の議論が「好み」から「設計」に変わります。
調整の手段として、標準化(手順やルールで揃える)、階層(上司が裁く)、相互調整(担当者同士で話す)の3つを示し、仕事の不確実性が高いほど相互調整の比重が増えると説きます。どの工程を手順書で固め、どの工程を人の判断に委ねるかを決めるときの基準になります。
4. 組織戦略の考え方|組織が腐る前に効く「健全性」の設計
沼上幹/筑摩書房(ちくま新書)/2003年
同じ著者の実践編にあたる1冊で、組織が内側から劣化していく過程を扱います。会議が増え、根回しが増え、決めた人が責任を取らなくなる。著者はこれを「組織の腐り方」と呼び、評価・人事・会議の仕組みがどう連鎖して劣化を生むかを描きます。
「フリーライダーを放置すると真面目な人から辞める」「権限と責任の対応が崩れると調整コストが跳ね上がる」といった指摘は、工程の責任者を決めずに運用している会社にそのまま当てはまります。中小企業の経営者が、組織を大きくする前に読んでおくと、後で直す手間が減ります。
5. 失敗の本質|個々は優秀なのに全体として負ける組織
戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎/中央公論新社(中公文庫)/1991年(新版2024年)
日本軍の6つの作戦を組織論の視点で分析した名著です。現場の兵士も指揮官も個々には有能だったのに、目的の曖昧さ、情報の集約の遅れ、評価基準の属人化が重なって敗北した。著者らが挙げる「目的の不明確さ」「戦略の逐次投入」「人的ネットワーク偏重の組織構造」は、今の会社の失敗にも形を変えて現れます。
BPMの視点で読むと、工程の目的が共有されない組織では、各工程がそれぞれ正しいことをしても全体が破綻するという教訓として読めます。経営者だけでなく、部門長が自部門の「局地的な勝利」に満足していないかを点検する材料にもなります。
6. イノベーションのジレンマ(増補改訂版)|組織の能力は資源・プロセス・価値基準で決まる
クレイトン・M・クリステンセン/翔泳社/2001年
破壊的技術の話として知られていますが、組織づくりの観点では第8章「組織にできること、できないこと」が核心です。クリステンセンは組織の能力を「資源(人・金・設備)」「プロセス(仕事の進め方)」「価値基準(何を優先するか)」の3つに分け、プロセスと価値基準は資源と違って簡単には移せないと論じます。
優秀な人を採っても成果が出ないとき、原因は人ではなくプロセスと価値基準にあることが多い。新しい事業を既存組織の中で進めるか、別組織にするかを決める判断軸として、経営者と新規事業の責任者に向いています。
第2層:役割・責任・権限の大きさを決める
工程を定義したら、誰がそれを持ち、どこまで決めてよいかを決めます。この層の7冊は、役割の切り方と責任の大きさの決め方を、それぞれ違う答えで示します。
7. HIGH OUTPUT MANAGEMENT|マネジャーの仕事を生産工程として扱う
アンドリュー・S・グローブ/日経BP/2017年
インテルの元CEOが書いた、組織を工場として見る教科書です。朝食の工場の例から始まり、「マネジャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分が影響を与えた隣接組織のアウトプット」と定義します。管理者の仕事は自分が手を動かすことではなく、部下の工程の出力を上げる活動(てこ)に時間を使うことだと言い切ります。
タスク成熟度に応じて関与の度合いを変える章、ミーティングを工程として設計する章、人事考課の章は、管理職研修の教材としてそのまま使えます。初めて部下を持つマネジャーと、マネジャーを評価する経営者の両方に向きます。
8. HOLACRACY|役職をなくし「ロール」と「責務」で組織を書く
ブライアン・J・ロバートソン/PHP研究所/2016年
ホラクラシーは、人ではなく「ロール(役割)」に目的・担当領域・責務を明文化し、一人が複数のロールを持つ組織運営の方式です。ロールの定義を変えるための会議(ガバナンス・ミーティング)と、日々の仕事を進める会議(タクティカル・ミーティング)を分け、組織構造の変更を手順化しています。
全面導入する会社は多くありませんが、「役割を人から切り離して書く」「責務は動詞で書く」「役割の変更を会議の議題として処理する」という3点は、どの会社でも取り入れられます。組織図を職務記述書に落とす作業で詰まっている人事担当者に向いています。
9. ティール組織|上司の承認を介さずに動く組織の運用ルール
フレデリック・ラルー/英治出版/2018年
組織の発達段階を色で表した本として広まりましたが、実務で役立つのは第2部の事例です。オランダの在宅ケア組織ビュートゾルフ、米国のトマト加工会社モーニングスターなど、上司の承認なしに現場が決める組織が、どんな手順(助言プロセス)と情報公開で成立しているかが具体的に書かれています。
権限委譲を「任せる」という気持ちの話で終わらせず、誰に助言を求めるか、対立をどう処理するか、報酬を誰が決めるかという運用ルールの束として読むと、自社に移せる部分が見えてきます。経営者が「自律的な組織にしたい」と言い始めたときに、具体の手順を確認する本です。
10. アメーバ経営|部門を小さな採算単位に分け、責任の大きさを数字で示す
稲盛和夫/日本経済新聞出版(日経ビジネス人文庫)/2010年
京セラの創業者が、組織を数人から数十人の「アメーバ」に分け、それぞれに時間当たり採算を持たせた仕組みを解説します。各アメーバは前工程から仕入れ、後工程に売る社内取引で結ばれ、リーダーは自分の単位の採算に責任を負います。責任の大きさが採算という数字で表されるため、工程の良し悪しが見えます。
社内の売買価格をどう決めるか、営業と製造の間で利益をどう配分するかなど、工程間の受け渡しで必ず揉める論点に答えが書かれています。工程ごとの責任者を立てたい製造業・サービス業の経営者と、管理会計を担当する人に向いています。
11. リーダーの仮面|位置・責任・権限を揃えて現場の迷いを消す
安藤広大/ダイヤモンド社/2020年
識学の考え方をもとに、管理職が「ルール」「位置」「利益」「結果」「成長」の5点だけに集中する方法を説いた本です。上司と部下の位置関係を曖昧にしない、指示は結果で確認する、感情ではなく事実で評価する。好みは分かれますが、組織を工程として動かすには、誰が決める人かを曖昧にしないという主張は一貫しています。
読み方としては、全部を採用するより「責任と権限の範囲を本人に言葉で伝えているか」「報告の締め切りを決めているか」という点検表として使うのが現実的です。プレーヤーから管理職になったばかりの人と、その人を育てる上司の両方に向きます。
12. ジョブ型雇用社会とは何か|「人に仕事を付ける」のか「仕事に人を付ける」のか
濱口桂一郎/岩波書店(岩波新書)/2021年
労働政策研究の第一人者が、日本の「メンバーシップ型」と欧米の「ジョブ型」の違いを、採用・賃金・解雇・教育訓練まで通して解説します。ジョブ型とは成果主義のことではなく、職務を先に定義してそこに人を当てる雇用の仕組みだと明確にします。
BPMで組織を描くと、工程(職務)が先にあり、人を後から当てる発想になります。それは日本の雇用慣行と相性が悪い部分があり、どこまで職務を固定し、どこを人に合わせて動かすかを決めなければなりません。役割定義を進める人事担当者が、制度の前提を誤解しないために読む本です。
13. ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則|誰をバスに乗せるかを先に決める
ジム・コリンズ/日経BP/2001年
良い会社から偉大な会社へ飛躍した11社を調べ、「最初に人を選び、その後に目標を決める」「針鼠の概念」「規律の文化」などの共通点を抽出した本です。レビュー数は経営書の中でも群を抜いて多く、経営者の間で共通言語になっています。
組織設計の順番としては、工程を描く前に、重要な座席(責任の大きなロール)に誰を置くかを決める、という示唆になります。第6章「規律の文化」にある、規律ある人が規律ある思考をすれば管理は不要になるという論は、ルールで縛る組織と自律に任せる組織のどちらを目指すかを考える材料になります。
第3層:一人の行動が次の人の行動を呼ぶ仕組み
役割を決めても、工程と工程の間の受け渡しが曖昧だと仕事は止まります。この層の7冊は、目標・会議・チーム構造・改革の手順を通して、行動が連鎖する仕組みを扱います。
14. Measure What Matters|目標の連鎖を組織全体で可視化する
ジョン・ドーア/日本経済新聞出版/2018年
インテルで生まれ、Googleに持ち込まれたOKR(目標と主要な結果)の実例集です。会社の目標が部門の目標を生み、部門の目標がチームと個人の目標を生む。その連鎖を全員が見られる状態にしておくと、隣の部門が何を優先しているかが分かり、受け渡しの衝突が減ります。
各章はGoogle、Intuit、ゲイツ財団などの当事者の語りで構成され、OKRが機能した例だけでなく、形骸化した例も出てきます。四半期ごとの目標の見直しを「会議の手順」として設計したい経営者と事業責任者に向いています。
15. チームトポロジー|チーム間のやり取りを3種類に限定する
マシュー・スケルトン、マニュエル・パイス/日本能率協会マネジメントセンター/2021年
ソフトウェア組織向けの本ですが、チームの型(ストリームアラインド、プラットフォーム、イネイブリング、コンプリケイテッド・サブシステム)と、チーム間のやり取りの型(コラボレーション、X-as-a-Service、ファシリテーション)を限定するという発想は、業種を問いません。
「どのチームとどのチームが、どの型で関わるか」を図にすると、受け渡しの約束が明文化されます。人事と現場、営業と制作のように部門間の摩擦が多い会社で、関わり方の種類を減らして整理したい責任者に向いています。コンウェイの法則(組織の構造がそのまま成果物の構造になる)の解説も実務的です。
16. スクラム|役割3つ・会議4つで仕事を回す最小の型
ジェフ・サザーランド/早川書房/2015年
スクラムの共同考案者が、その成り立ちと考え方を一般向けに書いた本です。プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発チームという3つの役割と、スプリント計画・デイリー・レビュー・振り返りという4つの会議だけで、仕事の計画から改善までが一周します。
各役割の責任(何を決めるか、何を決めないか)が明確に線引きされているため、「役割と会議のセットで仕事が連鎖する」仕組みの見本として読めます。エンジニア以外の部門にも適用した事例が載っており、少人数チームのリーダーが最初に試す型として扱いやすい内容です。
17. TEAM OF TEAMS|情報を全員に開き、決定を現場に下ろす
スタンリー・マクリスタル ほか/日経BP/2016年
米軍の統合特殊作戦部隊を率いた著者が、縦割りの指揮系統では敵の速さに追いつけなかった経験から、組織をチームのネットワークに作り替えた過程を書いています。鍵は二つで、情報を部隊横断で共有すること(共有意識)と、判断の権限を現場に下ろすこと(権限の委譲)です。
毎日の全体ブリーフィングに数千人が参加し、他部隊の動きを知った上で各自が決める。この運用は、工程間の受け渡しを「報告して承認を待つ」形から「状況を共有して各自が動く」形に変える具体例です。複数拠点や複数事業を抱え、意思決定の遅さに悩む経営者に向いています。
18. V字回復の経営(増補改訂版)|不振事業の組織をプロセスごと組み替える
三枝匡/日本経済新聞出版(日経ビジネス人文庫)/2021年
著者が実際に手がけた事業再生を、小説の形で描いた本です。不振の原因は人の能力ではなく、営業・開発・生産の間で情報と責任が途切れていることにあり、主人公たちは商品群ごとに事業を切り直し、一つの流れとして責任者を立て直していきます。
「戦略を描く前に、現場の業務連鎖を自分の足で追う」という改革の手順が、場面ごとに書かれています。巻末の「改革の50の要諦」は、組織変更を進める責任者の点検表として使えます。事業部長・改革プロジェクトの責任者に向いています。
19. 企業変革力|変革を8段階の工程として進める
ジョン・P・コッター/日経BP/2002年
ハーバードの教授が100社以上の変革を調べ、失敗の理由を8つに整理し、それを裏返した8段階の進め方(危機意識を高める、推進チームを作る、ビジョンを掲げる、伝える、障害を取り除く、短期的成果を出す、さらに変革を進める、定着させる)を示しました。
組織づくりそのものを一つのプロセスとして扱っている点で、この記事の主題に最も近い1冊です。各段階で誰が何をするかが書かれているため、組織変更の計画を工程表に落とすときの骨格になります。変革を任された人事責任者・経営企画に向いています。
20. 両利きの経営(増補改訂版)|深化と探索を別の工程として持つ
チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン/東洋経済新報社/2022年
既存事業を磨く「深化」と、新しい事業を探す「探索」は、必要なプロセス・評価基準・人材が違うため、同じ組織で同時にやると探索が潰されます。著者らは両者を別の組織単位に分け、経営トップがその両方を抱える構造を提案します。
増補改訂版ではAGCやNECなど日本企業の事例が加わり、分けた組織の間でどう人と資源を行き来させるかが具体的になりました。新規事業チームを作ったのに既存部門の評価基準に引きずられて止まった、という経験がある経営者に向いています。
第4層:各ポジションに求められる技能を鍛える
工程と受け渡しを設計しても、その座席に座る人に必要な技能が無ければ回りません。この層の5冊は、経営者・マネジャー・チームリーダーそれぞれの技能を扱います。
21. 経営者の条件|成果をあげる人の5つの習慣
P.F.ドラッカー/ダイヤモンド社/2006年
ドラッカーが「知識労働者が成果をあげる方法」を説いた本で、対象は社長だけではなく、判断によって組織の成果に影響する人全員です。時間を記録して管理する、貢献に焦点を合わせる、強みを生かす、重要なことに集中する、成果をあげる意思決定をする。この5つを習慣として身につけることを求めます。
特に「時間の記録」は、自分の工数がどの工程に消えているかを本人が把握する最初の手段です。管理職に昇格した人に、自分の時間の使い方を工程の視点で見直してもらうときに渡す本として適しています。
22. プロフェッショナルマネジャー|結果から逆算して経営する
ハロルド・ジェニーン/プレジデント社/2004年
ITTを14年半連続増益に導いた経営者の回想録で、ファーストリテイリングの柳井正氏が「最高の教科書」と評したことでも知られます。「本を読むときは初めから終わりへ読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」という一節が中心思想です。
数字は結果ではなく、問題が起きている工程を示す信号だという姿勢で、毎月の経営会議で各事業の責任者に事実を語らせた運営が描かれます。経営者が「責任の大きさに見合う報告の仕組み」を作るときの参考になります。
23. マネジャーの最も大切な仕事|進捗の実感が部下の次の行動を生む
テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー/英治出版/2017年
ハーバードの研究者が7社238人の日誌1万2千件を分析し、仕事への意欲を最も強く左右するのは「意味ある仕事が前に進んでいる実感」だと示した本です。マネジャーの仕事は励ますことではなく、進捗を妨げる障害を取り除き、進んだことを本人に見えるようにすることだと結論づけます。
工程の視点で言えば、各担当者が自分の工程の出力を日々確認できる状態を作ることがマネジャーの技能になります。1on1や日報の設計を「進捗が見える仕組み」として考え直したい管理職と人事に向いています。
24. 心理的安全性のつくりかた|受け渡しで問題を言い出せるチームの条件
石井遼介/日本能率協会マネジメントセンター/2020年
日本の組織に合わせて心理的安全性を「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4因子に分け、行動分析学をもとにリーダーの言動をどう変えるかを書いた本です。工程間の受け渡しで「この条件では受け取れない」と言えるかどうかは、この4因子に左右されます。
特に第4章の、行動の直後に何が起きるか(きっかけ・行動・みかえり)で行動が増減するという枠組みは、会議や報告の仕組みを設計する際に、どの言動を増やしたいかから逆算できます。現場リーダーと、リーダー研修を設計する人事担当者に向いています。
25. THE TEAM 5つの法則|チーム作りを設計手順として扱う
麻野耕司/幻冬舎/2019年
チームの運営を、目標設定(Aim)、人員選定(Boarding)、意思疎通(Communication)、意思決定(Decision)、共感創造(Engagement)の5つに分け、それぞれに型があることを示した本です。精神論ではなく、チームの活動の種類(環境の変化が大きいか、人の連携が密か)によって適した型が変わると整理しています。
「メンバーの入れ替わりが多いチームと固定のチームでは目標の決め方が違う」といった条件分岐が書かれているため、自社のチームに当てはめやすい構成です。初めてチームを持つリーダーが、最初の3か月で何を決めるかを整理するのに向いています。
ポジション別に求められる技能と、先に読む本
25冊を「どの座席の人が、何を身につけるために読むか」で並べ直すと次のようになります。自分の持ち場の行から読み始めると、読んだ内容をすぐ使えます。
| ポジション | 工程の中での役目 | 求められる技能 | 先に読む本 |
|---|---|---|---|
| 経営者・事業責任者 | 流れ全体の目的と構造を決め、責任の大きさを配分する | 目的から組織を逆算する/工程ごとに採算と責任を割り当てる/深化と探索を分ける | 1、3、10、13、20、22 |
| 部門長・マネジャー | 自部門の工程の出力を上げ、隣の部門との受け渡しを約束する | 部下の工程に「てこ」をかける/目標を上下左右につなぐ/進捗を見える形にする | 7、11、14、21、23 |
| 現場リーダー・チームリーダー | 日々の工程を回し、問題を受け渡しの前に表に出す | 役割と会議の最小の型を回す/問題を言い出せる場を作る/チームの型を選ぶ | 16、24、25 |
| 人事・組織企画 | 役割定義・等級・評価を工程と対応させ、変更の手順を運用する | 職務を言葉にする/雇用慣行との整合を取る/変革を8段階で進める | 8、12、19、4 |
| 改革プロジェクトの責任者 | 部門をまたぐ流れを描き直し、組織を組み替える | 現場の業務連鎖を追う/情報を横断で共有する/組織の能力をプロセスで診る | 2、5、6、15、17、18 |
人事・組織企画の行は、役割定義(8・12)→変更手順(19)→劣化の予防(4)の順で読むと、制度を作った後の運用まで見通せます。
読んだ内容を自社の組織に落とす手順
本を読んだだけでは組織は変わりません。BPMの進め方に沿って、次の5段階で落とし込みます。
- 現状の流れを1本描く。顧客からの問い合わせが契約になるまで、求人の起案が入社になるまで、といった具合に、部門をまたぐ流れを一つ選び、誰が何を受け取り誰に渡しているかを付箋で並べます(『学習する組織』『V字回復の経営』の視点)。
- 工程ごとに責任者と判断できる範囲を書く。「承認が要るか」「要るなら誰か」「金額や期日の上限はいくらか」を書き出します。書けない工程は、責任が曖昧な箇所です(『HOLACRACY』『リーダーの仮面』『組織デザイン』)。
- 受け渡しの条件を決める。前工程が何を揃えたら後工程が受け取るかを文章にします。採用で言えば、現場からの求人依頼に「期日・人数・必須条件・予算」が揃っていなければ人事は受け取らない、といった取り決めです(『チームトポロジー』『スクラム』)。
- 工程の指標を上から下へつなぐ。会社の目標から部門・チームの指標を導き、どの工程の数字が全体に効くかを全員が見られるようにします(『Measure What Matters』『アメーバ経営』)。
- 定例で直す場を持つ。月に一度、流れの図と指標を見ながら、止まっている受け渡しを特定して役割か条件を変えます。変更は会議の議題として処理し、担当者の善意に頼りません(『企業変革力』『心理的安全性のつくりかた』)。
採用の工程でこの手順を進める場合、求人依頼から内定までの受け渡しを外部に任せる選択肢もあります。どの工程を社内に残し、どこを委託するかの考え方は採用代行(RPO)のページで説明しています。
まとめ
組織を「誰が誰の上か」ではなく「誰が何を受け取り、どこまで決め、誰に渡すか」の連鎖として描くと、人の問題に見えていたことの多くが、役割の境界と受け渡し条件の問題だと分かります。25冊はその描き方を、土台・役割と責任・連鎖・各ポジションの技能の4層で示しています。
全部を読む必要はありません。自分の座席の行から1冊を選び、自社の流れを1本描いてから次の本に進んでください。図が1本あるだけで、2冊目以降の読み方が具体的になります。
CONTACT
採用の工程で、受け渡しが止まっているところを聞かせてください。
現場からの求人依頼が人事で滞る、面接の日程調整で候補者を待たせる、内定後の連絡が途切れる。採用の流れのどこで止まっているかをうかがえれば、社内で持つ工程と外に出す工程の切り分けをお伝えします。


























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