業務の属人化をなくしたい、部門間の引き継ぎを整えたい、システム導入前に仕事の流れを整理したい。こうした課題を体系的に扱う考え方が、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)です。
BPMは、業務フローを一度描いて終わる活動ではありません。顧客や従業員にどんな価値を届けるのかを確認し、現状を可視化し、あるべき流れを設計し、実行後の数字を見ながら改善を続けます。BPRが業務を抜本的に組み替える改革だとすれば、BPMは日々の運用と継続改善まで含む管理の仕組みです。
この記事では、BPMの全体像をつかめる本から、BPMNで業務フローを描く本、BPRやリーン改善を実務に落とし込む本まで25冊を紹介します。人事・採用業務で学ぶ場合は、求人作成から応募受付、面接、合否連絡、入社までを一つの流れとして捉えると、書籍の内容を試しやすくなります。BPRとBPMの違いを採用業務に当てはめた説明は、採用業務の具体例を使った解説も参考にしてください。
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BPMを学べる本の選び方
25冊をすべて読む必要はありません。最初に「考え方を知りたいのか」「図にしたいのか」「現場の改革を進めたいのか」を決めると、読む本を絞れます。
| 目的 | 先に読む分野 | 候補 |
|---|---|---|
| BPMの意味をつかむ | 全体像 | 『ビジネスプロセスの教科書 第2版』 |
| 業務フローを正しく描く | BPMN・モデリング | 『業務フローの描き方』『BPMNによるビジネスプロセスモデリング入門』 |
| 改革プロジェクトを動かす | BPR・業務設計 | 『業務改革の教科書』『業務設計の教科書』 |
| 現場のムダや滞留を減らす | リーン・TOC | 『トヨタ生産方式』『ザ・ゴール』 |
| 実績データから流れを分析する | プロセスマイニング | 『Process Mining: Data Science in Action』 |
初めて学ぶ人は、1冊目で全体像、2冊目で自社の業務フロー、3冊目で改善の進め方を読む順番が現実的です。BPMツールを比較する段階に入ったら、BPMツールとワークフロー・業務アプリの違いも確認しておくと、ツール導入が目的化しにくくなります。
BPMの全体像をつかめる本
1冊目:ビジネスプロセスの教科書・第2版
著者:山本政樹
BPMを初めて学ぶ人が最初に手に取りやすい一冊です。顧客の期待から業務を捉え、全体構造を俯瞰する視点と、現場の仕事を分解して見る視点を行き来しながら、業務がうまく回らない理由を整理します。DXやデジタル化を「ツールを入れる話」にせず、価値を届けるプロセスの設計として考えたい人に向いています。
2. ビジネスプロセス変革
著者:トニー・サルダナ、フィリッポ・パッセリーニ 監修:EYストラテジー・アンド・コンサルティング
全社の共通業務やシェアードサービスを含め、プロセス変革を組織の競争力につなげる考え方を学べます。部門単位の改善から一段上がり、経理・人事・総務などのバックオフィスを横断して設計したい人向けです。小さな業務改善の本では扱いにくい、経営とオペレーションの接続を考える材料になります。
3. BPMがビジネスを変える
著者:日沖博道
BPRのような一度きりの改革ではなく、業務プロセスを継続的に見直すBPMの意味を、ITや経営管理との関係から整理した本です。ERP、SCM、内部統制、プロセスモニタリングなどとのつながりも扱うため、業務改善とシステム企画を別々に考えてしまう人に適しています。
4. 業務改革の思考プロセス
著者:高橋淳 編:日本ビジネスプロセス・マネジメント協会
業務の目的を確認し、ICOM分析で機能・入力・出力・制御の関係を整理し、対立構造を見つけて改革案へ進む本です。「現場が忙しくて改善の話し合いが進まない」という場合でも、問題を感覚ではなく構造として扱う練習になります。演習を使って一つの業務を分解したい人に向いています。
5. プロセス・マネジメント入門
著者:高梨智弘、万年勲
プロセスを軸に業務改革と経営革新を考える、基本概念の整理に役立つ本です。担当者の作業効率だけでなく、組織全体の成果や品質との関係を見たい人に適しています。BPMの用語を一つずつ確認しながら、改善活動を経営の仕組みとして捉えたい場合に候補になります。
BPMNと業務フローの描き方を学べる本
6. ビジネスプロセス・マネジメントのための業務フローの描き方
著者:山原雅人
BPMNとBPMSを使い、業務フローを描くだけでなく実行・改善につなげる考え方を扱います。国際標準の記法を使って、引き継ぎや部門間の認識差を減らしたい担当者に向いています。2025年刊行の本なので、これからBPMNと業務システムの連携を学ぶ人にも選びやすい一冊です。
7. BPMNによるビジネスプロセスモデリング入門
著者:加藤正人
BPMNの基本記号から、ビジネスモデル、BPR、BPM、SOAとの関係までを順に確認できます。イベント、アクティビティ、ゲートウェイなどの意味を一度整理しておきたい人に便利です。業務担当者とシステム担当者が同じ図を見て話すための共通言語を作るときに使えます。
8冊目:詳説ビジネスプロセスモデリング
著者:Michael Havey 監訳:長瀬嘉秀、永田渉
ビジネスプロセスをシステムの設計やサービス指向アーキテクチャへつなげる、技術寄りの内容です。業務の流れをコードやサービスの構造に落とす場面、BPMの設計パターンを深く知りたい場面に向いています。非エンジニアにはやや重いため、BPMNの入門書を読んでから進むと理解しやすくなります。
9. 上流モデリングによる業務改善手法入門
著者:世古雅人、渡邊清香
付箋などを使って業務を書き出し、流れを整理し、問題を発見して改善へ進む実務的な本です。UMLによる業務フローにも触れるため、現場とシステム開発の間にある認識のずれを埋めたい人に合います。複雑な業務をいきなりツールで描く前の準備として役立ちます。
10. はじめよう!プロセス設計
著者:羽生章洋
業務改革やIT化の前に、仕事の流れをどう設計するかをストーリー形式で学べます。業務フローを描いても、作業の羅列で終わってしまう人に向いています。顧客体験、業務の価値、評価の置き方まで考えながら、現場で使えるプロセスへ組み立てる視点を得られます。
BPR・業務設計・オペレーションを学べる本
11. 業務改革の教科書
著者:白川克、榊巻亮
改革の立ち上げ、現状調査、将来像の設計、意思決定までをプロジェクトの流れに沿って学べます。現場のヒアリングや業務とシステムの棚卸し、マスタースケジュールなど、改革を始めるときの具体的な論点が多い本です。BPMを知識で終わらせず、関係者を巻き込んで進めたい人におすすめします。
12. 業務プロセス改革
著者:平山賢二
部門間のつながりを可視化し、組織横断で改善するための考え方を扱います。一つの部署だけを効率化しても、前後工程にしわ寄せが出る会社では、プロセス全体を見る必要があります。現状の業務を整理してから改善案を実行する、コンサルティング型の進め方を知りたい人に適しています。
13. 業務設計の教科書
著者:武内俊介
システムやAIを入れる前に、業務の目的・流れ・責任分界を設計する重要性を説明した新しい実務書です。人事・経理・総務などのバックオフィス業務を、属人化しにくく変化に対応できる形へ整えたい人に向いています。DXの計画がツール選びから始まりがちな組織では、読む順番を見直すきっかけになります。
14. 業務デザインの発想法
著者:沢渡あまね
業務を「仕組み」と「仕掛け」の両面から考え、定常業務と非定常業務、人が担うこととシステムが担うことを切り分けます。RPAや新しいツールを導入したのに、かえって手間が増えた経験がある人に向いています。日々のオペレーションを利用者の行動や組織の習慣まで含めて設計したい場合に役立ちます。
15. オペレーショナル・エクセレンス
著者:田中陽一、杉山徳伸、住吉光博
業務品質の高い組織の特徴を整理し、BPRを理論だけでなく実行と定着の問題として扱います。業務を標準化した後に、品質をどう保つか、改善をどう続けるかを考えたい人に適しています。BPMの「管理」と「改善」を現場のオペレーションに結びつける一冊です。
業務改善・リーン・TOCを実務に生かす本
16. トヨタ式ホワイトカラーの業務改善
著者:石橋博史
ホワイトカラーの仕事を可視化し、ムダ・ムラ・ムリを見つけ、業務の標準化や多能職化へつなげる考え方を紹介します。人事や総務のように、担当者ごとのやり方が残りやすい業務を見直すときに読みやすい本です。業務時間や作業量を記録し、改善の効果を数字で確認したい人にも向いています。
17. 手軽に始める業務改善
著者:峯村隆久
業務改善の時間を確保するところから始め、職場での小さな効率化、分析、改善策の立案、業務マニュアルの整備まで段階的に進めます。改善活動が一部の熱心な人だけに依存している中小企業に合います。大規模なBPRの前に、現場で改善を続ける体質を作りたい場合の入門書です。
18. 誰でもわかる!業務フローチャートのつくり方
著者:石井真人
業務フローチャートの作成から運用までを、初めての人向けに説明しています。担当者の頭の中にある仕事を図にし、どこで判断し、何を引き渡しているかを共有したいときに便利です。採用業務なら、応募受付から面接設定、合否連絡までの流れを一枚にする練習から始められます。
19. トヨタ生産方式
著者:大野耐一
ジャスト・イン・タイム、自働化、かんばん、ムダの排除など、トヨタ生産方式の基本思想を学ぶ古典です。製造現場の本ですが、仕事を必要なタイミングに必要な量だけ流し、異常を止めて原因を直すという考えは、バックオフィスの業務設計にも応用できます。BPMの改善思想を深く理解したい人向けです。
20冊目:図解・リーンシックスシグマ
著者:眞木和俊
リーンのムダ取りと、シックスシグマのばらつき低減を組み合わせた問題解決の考え方を図解で学べます。処理時間の平均だけでなく、担当者や案件による差、やり直しの発生率まで見たい人に向いています。改善効果を測定しながらBPMのサイクルを回したい場合の補助線になります。
制約理論とプロセスマイニングを学ぶ本
21. ザ・ゴール
著者:エリヤフ・ゴールドラット
工場の再建を描く物語を通して、全体の成果を止めている制約に集中するTOC(制約理論)を学べます。各工程を個別に効率化しても、ボトルネックが変わらなければ全体の流れは改善しません。採用であれば、応募数ではなく面接設定や合否連絡の滞留が全体を止めていないかを見る視点につながります。
22. ザ・ゴール2 思考プロセス
著者:エリヤフ・ゴールドラット
複雑な問題の原因をたどり、対立を整理し、解決策を組み立てる「思考プロセス」を物語で学ぶ本です。現場の要望がぶつかり、どちらかを我慢させる案しか出ないときに、前提を見直すきっかけになります。業務改善会議で「なぜそうしているのか」を掘り下げたい人におすすめです。
23冊目:「ザ・ゴール」シリーズ・クリティカルチェーン
著者:エリヤフ・ゴールドラット
プロジェクトが遅れる原因を、個別作業の見積もりだけでなく、作業のつながりとリソースの競合から捉えます。業務改革プロジェクトやシステム導入が、承認待ち・担当者待ちで伸びてしまう組織に向いています。定常業務だけでなく、改善活動そのものの流れを管理したい人に適した一冊です。
24. Fundamentals of Business Process Management
著者:Marlon Dumas、Marcello La Rosa、Jan Mendling、Hajo A. Reijers
BPMのライフサイクルを英語で体系的に学ぶ定番書です。プロセスの発見、モデリング、分析、改善、実装、監視までを一通り扱い、BPMNやプロセスマイニングにもつながります。日本語の入門書で全体像をつかんだ後、専門用語を原書で確認したい人や、IT・業務分析を専門にする人向けです。
25. Process Mining: Data Science in Action
著者:Wil van der Aalst
システムのイベントログから、実際にどのような順番で業務が進んでいるかを分析するプロセスマイニングの専門書です。設計した業務フローではなく、実績データに現れた分岐、手戻り、滞留、担当者間の違いを確認できます。業務データを使ってBPMの改善精度を高めたい人向けで、英語の専門書に抵抗がなければ有力な選択肢です。
人事・採用業務でBPMを試す進め方
本を読んだ後は、いきなり全社の業務を変えず、一つのプロセスを選びます。人事・採用なら、次のような流れが始めやすい対象です。
- 求人作成から応募受付までの担当者と受け渡しを並べる
- 応募者への返信、日程調整、面接、合否連絡の滞留時間を記録する
- 現状のフローと、あるべきフローを分けて描く
- まず一つの職種や拠点で試し、返信時間や面接設定率を比較する
- 効果が確認できた部分だけ標準化し、例外対応を追加する
採用業務のBPMは、応募者数だけを追う活動ではありません。返信の速さ、面接設定までの時間、面接官の評価入力、合否連絡の遅れなど、プロセスのどこで価値が止まっているかを見ます。BPM導入の担当や期限、例外対応を具体化する方法は、BPMを導入する手順の解説も確認できます。
まとめ
BPMを学べる本は、全体像を理解する本、業務フローを描く本、BPRや業務設計を進める本、リーン・TOCで流れを改善する本、データで実績を分析する本に分けて選ぶと迷いにくくなります。
最初の一冊なら『ビジネスプロセスの教科書 第2版』、図にするなら『ビジネスプロセス・マネジメントのための業務フローの描き方』、改革を動かすなら『業務改革の教科書』が候補です。採用や人事の業務で試す場合は、一つの職種・一つの工程に絞り、現状の流れと滞留時間を見えるようにするところから始めると、学んだ内容を実務へ移しやすくなります。
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採用の“詰まっているところ”を聞かせてください。
採用業務は、求人作成・応募対応・面接調整・合否連絡のどこで時間が止まっているかによって、見直す順番が変わります。現状の流れをうかがい、どの工程から整えるべきか一緒に整理します。



























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