採用の業務フローを改善する本おすすめ25選|BPM・DX・トヨタ生産方式の名著を解説

茶色と灰色の円や長方形を組み合わせた幾何学模様 採用代行・RPO

案件が決まると、現場の責任者がチャットで「来月から2人ほしい」と人事に送る。人事が条件を聞き取ってATSに求人を登録し、現場が内容を確かめて承認する。承認が下りたら、ATSに登録済みの候補者から合いそうな人を選んで求人に紐づけ、メールや電話で興味があるかを確かめる。脈がありそうならMTGを組んで案件を説明し、条件をすり合わせてアサインする。

この流れは「採用」と呼ばれますが、詰まる場所の多くは面接の技術ではなく、採用の業務フローにあります。チャットの依頼が人事に届いたまま止まる、承認が誰のところで寝ているか分からない、同じ候補者に別の担当者が二重に電話をかける。原因は業務の流れの設計にあります。そのため、採用の業務フローを改善するには、採用の本だけでなく、業務改善・BPM(業務プロセス管理)・DXの本を合わせて読むほうが早く手が打てます。

ここでは、採用の業務フローを見直して改善するのに役立つ25冊を、著者の実績と長く読み継がれてきた評価の高い順に並べました。1位から7位はトヨタ生産方式や制約理論を生んだ当事者の本、8位から17位は人事・組織・DXの第一人者の本、18位から25位は現場の手順にそのまま落とせる実務書です。

業務改善の本だけを深く読みたい場合はBPMを学べる本おすすめ25選とBPRを学べる本おすすめ25選、採用工程の帳票や工数まで知りたい場合は採用を仕組み化する本おすすめ30選も参考になります。採用の実務書から入って工程ごとに読み進めたい場合は、採用からアサインまでの流れを学べる本おすすめ25選がおすすめです。

  1. 工程ごとに効く本の早見表
  2. 1〜7位:仕事を「流れ」で見る古典
    1. 1. トヨタ生産方式|後工程が必要な分だけ前工程から引く
    2. 2. リエンジニアリング革命|部署ではなくプロセスで仕事を組み直す
    3. 3. ザ・ゴール|全体の速さは一番詰まっている工程で決まる
    4. 4. リーン・シンキング|価値の流れを描いてムダを削る
    5. 5. HIGH OUTPUT MANAGEMENT|管理者の仕事を生産工程として扱う
    6. 6. プロセス・コンサルテーション|相手が本当に困っていることを一緒に見つける
    7. 7. カイゼン|一度作った仕組みを毎月少しずつ直す
  3. 8〜17位:人事・組織・DXの第一人者の本
    1. 8. ワーク・ルールズ!|採用の判断を一人に任せない
    2. 9. 人材マネジメント入門|採用と配置を一つの仕組みとして見る
    3. 10. DXの思考法|業務をレイヤーに分けてつなぎ直す
    4. 11. 採用学|候補者を「見極める」と「惹きつける」を分ける
    5. 12. 戦略人事のビジョン|制度ではなくストーリーで人を動かす
    6. 13. The DevOps 逆転だ!|仕掛かりの仕事を見える場所に出す
    7. 14. チームトポロジー|チームの間のやり取りの形を決める
    8. 15. 採用基準|求める人物像を具体的な言葉にする
    9. 16. ソフトウェア・ファースト|何を自社で持ち、何を外に任せるか
    10. 17. アフターデジタル|候補者との接点を一つの体験として設計する
  4. 18〜25位:現場の手順にそのまま落とせる実務書
    1. 18. 業務改革の教科書|フロー図を描き、関係者の合意を取る
    2. 19. システムを作らせる技術|エンジニアでない人がATSの要件を決める
    3. 20. THE MODEL|段階ごとの引き継ぎの条件を決める
    4. 21. トヨタ式「改善」の進め方|事務の職場で改善を始める
    5. 22. 採用に強い会社は何をしているか|惹きつけ、見立て、辞退させない
    6. 23. 職場の問題地図|依頼と承認の滞りを図で整理する
    7. 24. カンバン仕事術|候補者のステータスをボードで見える化する
    8. 25. いちばんやさしいDXの教本|人事の何からデジタル化するかを決める
  5. 読む順番の目安
  6. まとめ

工程ごとに効く本の早見表

案件の発生からアサインまでを6つの工程と、流れ全体の設計、システム化に分けると、それぞれに効く本は次のとおりです。いま一番困っている工程の行から読み始めると、1冊目から手を動かせます。

工程 起きやすい詰まり 効く本(順位)
①現場からのニーズ受付 チャットの依頼が埋もれる、依頼の書き方が人によって違う 人材マネジメント入門(9)、戦略人事のビジョン(12)、採用に強い会社は何をしているか(22)、職場の問題地図(23)
②人事のヒアリング・求人登録 「いい人がほしい」から先が聞き出せない プロセス・コンサルテーション(6)、採用基準(15)、システムを作らせる技術(19)
③現場の確認・承認 承認者が多すぎる、誰の手元で止まっているか見えない リエンジニアリング革命(2)、チームトポロジー(14)、業務改革の教科書(18)
④候補者の選定と求人への紐づけ 選ぶ基準が担当者の勘になる ワーク・ルールズ!(8)、採用学(11)、THE MODEL(20)、カンバン仕事術(24)
⑤メール・電話での意向確認とMTG 連絡が遅れて他社に決まる、二重連絡が起きる ザ・ゴール(3)、HIGH OUTPUT MANAGEMENT(5)、アフターデジタル(17)
⑥アサインと受け入れ後 アサイン後のずれが次の案件に生かされない リーン・シンキング(4)、カイゼン(7)、トヨタ式「改善」の進め方(21)
流れ全体の設計 部署ごとには頑張っているのに全体が遅い トヨタ生産方式(1)、ザ・ゴール(3)、The DevOps 逆転だ!(13)
ATS・チャットのシステム化 ツールを入れたのに運用が定着しない DXの思考法(10)、ソフトウェア・ファースト(16)、いちばんやさしいDXの教本(25)

1〜7位:仕事を「流れ」で見る古典

最初の7冊は、製造業やサービス業の改善手法を生み出した当事者や、その手法を体系化した研究者の本です。採用の話は出てきませんが、依頼が人事に届いてからアサインが決まるまでを一本の流れとして見る目は、この棚で身につきます。

1. トヨタ生産方式|後工程が必要な分だけ前工程から引く

大野耐一/ダイヤモンド社/1978年

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ダイヤモンド社
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トヨタ自動車の副社長を務め、ジャスト・イン・タイムと自働化を現場で作り上げた本人が書いた本です。後工程が必要なものを、必要なときに、必要な分だけ前工程から引き取るという考え方と、つくりすぎ・手待ち・運搬・加工・在庫・動作・不良をつくるという7つのムダの分類が、この本で語られています。

採用からアサインまでに置き換えると、後工程は案件を抱えた現場です。現場が求めていない段階で候補者を大量に集めるのは「つくりすぎ」、承認を待って求人登録が止まるのは「手待ち」にあたります。自社のフローで7つのムダがどこに出ているかを書き出すだけでも、手を入れる順番が決まります。

2. リエンジニアリング革命|部署ではなくプロセスで仕事を組み直す

マイケル・ハマー、ジェイムズ・チャンピー/日本経済新聞社/1993年

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日経BP 日本経済新聞出版本部
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BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)という言葉を世界に広めた本です。仕事を部署の単位で分けて最適化するのをやめ、顧客に価値が届くまでのプロセスを単位にして根本から設計し直す、という主張で書かれています。

現場の依頼から人事の登録、現場の承認、候補者への連絡までは、部署をまたぐ一つのプロセスです。承認が3段階あるなら、それぞれの段階が何を確かめているのかを書き出し、確認の中身が重なっている段階は一つにまとめる。この本の事例は保険会社や製造業ですが、承認の段数を減らす考え方はそのまま使えます。

3. ザ・ゴール|全体の速さは一番詰まっている工程で決まる

エリヤフ・ゴールドラット/ダイヤモンド社/2001年(日本語版)

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物理学者のゴールドラットが、制約理論(TOC)を工場長の奮闘を描く小説の形で説明した本です。工場全体の出来高は一番処理の遅い工程(ボトルネック)で決まるため、それ以外の工程をいくら速くしても全体は速くならない、という結論が物語の中で何度も確かめられます。

採用の流れでも、ヒアリング、承認、面談の日程調整のどれか一つが全体の速さを決めています。候補者への連絡数を増やしても、面談枠を持つ現場の責任者の予定が週に1枠しか空かないなら、アサインの数は増えません。まずボトルネックを特定し、そこの能力を使い切る手を先に打つ、という順番が身につきます。

4. リーン・シンキング|価値の流れを描いてムダを削る

ジェームズ・P・ウォマック、ダニエル・T・ジョーンズ/日経BP社/2008年(改訂増補版)

MITの国際自動車研究プログラムでトヨタの仕組みを「リーン」と名づけて世界に紹介した研究者が、その原則を5つにまとめた本です。顧客から見た価値を定める、価値が生まれる流れ(バリューストリーム)を描く、流れを止めない、後工程から引く、完璧を目指して繰り返す、の5つです。

案件の発生からアサインまでを付箋で一枚の紙に並べ、それぞれの工程にかかっている日数と、待っている日数を書き込むと、バリューストリームマップができます。待ちの日数が作業の日数の何倍もある、という結果になることが多く、どこを削るべきかが数字で見えます。

5. HIGH OUTPUT MANAGEMENT|管理者の仕事を生産工程として扱う

アンドリュー・S・グローブ/日経BP社/2017年(新版)

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インテルのCEOを務めたグローブが、朝食を出す店の仕込みを例に、管理者の仕事を生産工程として説明した本です。先行指標を決めて工程の手前で異常に気づく、ミーティングを目的別に分ける、1on1で部下の状況を把握する、といった手法が具体的に書かれています。採用面接の進め方に触れた章もあります。

採用の流れでは、アサイン数は結果の指標で、気づいたときには手遅れです。今週紐づけた候補者の数、連絡がついた数、MTGを組めた数を先行指標として毎週見ると、案件の開始日に間に合うかが早い段階で分かります。

6. プロセス・コンサルテーション|相手が本当に困っていることを一緒に見つける

エドガー・H・シャイン/白桃書房/2002年(日本語版)

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白桃書房
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組織文化とキャリア研究の第一人者で、MITスローン経営大学院の名誉教授だったシャインが、人を助けるときの関わり方を説いた本です。専門家が答えを渡すのではなく、問いかけを通じて依頼者自身が問題を見つけられるように関わる、という姿勢が多くの事例とともに書かれています。

現場から「とにかく早く人がほしい」と言われたとき、その言葉どおりに求人を出すと、入ってから「思っていた人と違う」になりがちです。どんな作業を、いつまでに、誰の下でやってもらうのか。人事のヒアリングを「聞き出す」場ではなく「一緒に整理する」場にする考え方が、この本の中心にあります。

7. カイゼン|一度作った仕組みを毎月少しずつ直す

今井正明/日本経済新聞出版/復刻改訂版

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日経BP 日本経済新聞出版本部
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「KAIZEN」という言葉を世界に広め、改善指導の組織を立ち上げた著者の代表作です。大きな改革を一度やるのではなく、標準を決め、小さく直し、また標準に戻す、というサイクルを現場で回し続ける考え方が説明されています。1980年代に英語で出版され、日本語版も長く読まれてきました。

フローを一度設計しても、案件の種類や人員が変われば合わなくなります。月に一度、アサインまでにかかった日数と、途中で止まった案件の理由を見直す場を決めておく。この本はその場をどう運営するかの基本書として読めます。

8〜17位:人事・組織・DXの第一人者の本

次の10冊は、大企業の人事トップ、人事・採用の研究者、DX政策や大手IT企業の開発を率いた人の本です。現場と人事の役割分担、候補者の選び方、ツールの組み合わせ方が、この棚で具体的になります。

8. ワーク・ルールズ!|採用の判断を一人に任せない

ラズロ・ボック/東洋経済新報社/2015年

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東洋経済新報社
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Googleの人事担当上級副社長として採用と人事制度を作った著者が、その中身を明かした本です。全員に同じ質問をする構造化面接、面接官の評価を集めて採用委員会が判断する仕組み、採用の判断が後の成果と合っていたかをデータで確かめるやり方が書かれています。

ATSから候補者を選んで求人に紐づける段階で、担当者ごとに選ぶ基準がばらつくなら、この本の考え方が役立ちます。選ぶ人と最終的に決める人を分け、判断の理由をATSに残しておくと、後から「なぜこの人を紐づけたのか」を振り返れます。

9. 人材マネジメント入門|採用と配置を一つの仕組みとして見る

守島基博/日経BP 日本経済新聞出版(日経文庫)/新版

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日経BP
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学習院大学教授で、日本の人材マネジメント研究を長く率いてきた著者の入門書です。人材を調達し、配置し、育て、評価し、処遇するまでを一つのシステムとして説明していて、採用と配置がどうつながるかを短い時間で押さえられます。

今回のフローは採用で終わらず、アサインまで続きます。採用とアサインを別の担当が別の基準で動かしていると、採った人を合わない案件に入れてしまいます。両方を一つの仕組みとして設計するための土台として最初に読める1冊です。

10. DXの思考法|業務をレイヤーに分けてつなぎ直す

西山圭太/文藝春秋/2021年

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文藝春秋
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経済産業省で商務情報政策局長を務め、日本のDX政策に関わった著者が、デジタル化の本質を「レイヤー構造」で説明した本です。業務を縦割りのまま電子化するのではなく、共通する部分を層として切り出し、その上で組み合わせる、という考え方が繰り返し出てきます。

チャット、ATS、カレンダー、メールをそれぞれ別の業務として使っていると、同じ情報を何度も入力することになります。候補者の情報はATS、やり取りはチャット、予定はカレンダー、と層ごとに置き場所を決め、層の間をつなぐ、という整理の仕方がこの本で身につきます。

11. 採用学|候補者を「見極める」と「惹きつける」を分ける

服部泰宏/新潮選書/2016年

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神戸大学で採用を研究する著者が、日本企業の採用を学術の立場から一般向けに整理した本です。どの選考手法が入社後の働きぶりを予測できるのか、候補者は企業のどこを見て応募や辞退を決めているのかを、国内外の研究と調査をもとに説明しています。

メールや電話で意向を確かめる段階は、こちらが選ぶ場面というより、候補者に選んでもらう場面です。案件の説明が条件の羅列になっていないか、仕事の大変な面も先に伝えているか。MTGで話す中身を決める前に読んでおくと、説明の順番が変わります。

12. 戦略人事のビジョン|制度ではなくストーリーで人を動かす

八木洋介、金井壽宏/光文社新書/2012年

GEやLIXILで人事のトップを務めた八木氏と、神戸大学で組織行動を研究してきた金井氏の共著です。人事が制度を作って守らせる管理部門にとどまらず、事業の意思決定に関わる立場になるための考え方が、八木氏の実務の経験をもとに語られています。

現場からの依頼をそのまま受けて処理するだけの人事と、案件の背景まで聞いて「その案件なら今いる人の配置換えのほうが早い」と提案できる人事では、フローの形が変わります。どこまで現場に任せ、どこで人事が判断するかを決めるときの指針になります。

13. The DevOps 逆転だ!|仕掛かりの仕事を見える場所に出す

ジーン・キム、ケビン・ベア、ジョージ・スパッフォード/日経BP社/2014年

『ザ・ゴール』の考え方をIT部門に置き換えた小説です。障害対応と割り込みの依頼に追われるIT部門の責任者が、仕事を4種類に分け、仕掛かりの仕事を壁に貼り出し、同時に抱える量に上限を設けることで立て直していく過程が描かれています。

人事にも、現場からの急な依頼、候補者からの問い合わせ、上長からの資料作成が割り込みで入ります。どの依頼がどこで止まっているのかを全員が見える場所に出すだけで、同じ確認の繰り返しが減ります。物語なので、現場の責任者に渡して読んでもらいやすい1冊です。

14. チームトポロジー|チームの間のやり取りの形を決める

マシュー・スケルトン、マニュエル・パイス/日本能率協会マネジメントセンター/2021年

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ソフトウェア開発の組織設計で世界的に参照されているモデルを示した本です。チームを4つの型に分け、チームの間のやり取りを「協働」「サービスとして提供」「支援」の3つに限定して設計する、という考え方が書かれています。日本語版はITエンジニア本大賞2023のビジネス書部門でベスト3と特別賞に選ばれました。

現場と人事のやり取りが毎回打ち合わせになっているなら、それは「協働」になっています。依頼の項目と返答の期限を決めて「サービスとして提供」の形に変えれば、打ち合わせを減らせます。どの工程をどの形にするかを決めるための言葉が手に入ります。

15. 採用基準|求める人物像を具体的な言葉にする

伊賀泰代/ダイヤモンド社/2012年

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マッキンゼー・アンド・カンパニーで約12年採用マネージャーを務めた著者が、世界中から候補者を集める会社で何を基準に人を選んでいたかを明かした本です。前半は求める資質の話、後半はその資質を持つ人を日本でどう育てるかの話で構成されています。

ヒアリングで現場から出てくる人物像は「コミュニケーション力がある人」のような一言で止まりがちです。この本を読むと、その一言を、どんな場面で何をしてくれる人かという行動の言葉に言い換えるところまでが、求人を登録する前の人事の仕事だと分かります。

16. ソフトウェア・ファースト|何を自社で持ち、何を外に任せるか

及川卓也/日経BP/2019年

Microsoft、Googleでの開発と、Qiitaを運営したIncrementsでの経験を持つ著者が、ソフトウェアを事業の中心に置く組織の作り方を説いた本です。システムを外部に丸投げするのをやめ、自社で判断すべき部分を見極めて内製する、という考え方で書かれています。

ATSを入れるときも、項目や画面をベンダーの標準のまま使うのか、自社のフローに合わせて作り込むのかの判断が必要になります。候補者の紐づけ方や承認の流れのように、自社の強みに関わる部分は自分たちで決める。その線の引き方がこの本で分かります。

17. アフターデジタル|候補者との接点を一つの体験として設計する

藤井保文、尾原和啓/日経BP/2019年

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中国の先進事例をもとに、オンラインとオフラインの区別がなくなった社会でのビジネスの組み立て方を示した本です。顧客との接点をすべてデータでつなぎ、行動に合わせて体験を設計し直す、という考え方が紹介されています。

候補者から見ると、最初のメール、電話、MTG、アサインの連絡は一続きの体験です。電話で話した内容がMTGの担当者に伝わっていない、という小さな断絶が辞退につながります。候補者側の視点で接点を並べ直すと、どこで情報を引き継ぐべきかが見えてきます。

18〜25位:現場の手順にそのまま落とせる実務書

最後の8冊は、業務改革のコンサルタントや、採用・業務改善の実務家が書いた本です。フロー図の描き方、ATSの要件の決め方、候補者のステータス管理のように、明日の作業にそのまま使える手順が多く書かれています。

18. 業務改革の教科書|フロー図を描き、関係者の合意を取る

白川克、榊巻亮/日本経済新聞出版社/2013年

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業務改革のプロジェクトを数多く手がけてきたケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント2人が、プロジェクトの立ち上げから目的の明確化、計画、全社の承認、実行までを手順で書いた本です。現場で使った道具が写真つきで公開されています。

今回のようなフローを社内で作るとき、一番手間がかかるのは図を描くことより関係者に納得してもらうことです。現場の責任者と人事の両方が「この形なら回せる」と言える状態にするまでの進め方が、この本に一通り書かれています。

19. システムを作らせる技術|エンジニアでない人がATSの要件を決める

白川克、濵本佳史/日本経済新聞出版/2021年

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同じくケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタントが、システムを作る側ではなく、作ってもらう側の業務担当者に向けて書いた本です。目的(Why)を決め、現状を棚卸しし、将来の業務の形(How)を描いてから、システムへの要求(What)を決める、という順番で章が並んでいます。

ATSに求人の項目を何個持たせるか、承認を何段階にするかを先に決めると、運用が始まってから現場が使わない項目が残ります。先に業務の形を決め、それに必要な項目だけをシステムに求める。この順番を守るための本です。

20. THE MODEL|段階ごとの引き継ぎの条件を決める

福田康隆/翔泳社/2019年

日本オラクル、セールスフォース・ドットコムを経てマルケトの日本法人代表を務めた著者が、マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスの分業の仕組みを書いた本です。段階ごとに次の担当へ渡す条件を決め、段階の間の移行率を見ながら全体を管理するやり方が示されています。

営業の本ですが、候補者を「紐づけ済み」「連絡済み」「興味あり」「MTG実施」「アサイン」の段階で管理する形にそのまま置き換えられます。たとえば「興味あり」から「MTG実施」への移行率が他の段階より低ければ、日程調整に問題がある、と当たりがつけられます。

21. トヨタ式「改善」の進め方|事務の職場で改善を始める

若松義人/PHPビジネス新書

トヨタで大野耐一のもとで生産管理と改善を実践した著者が、トヨタ式の改善を製造以外の職場で進めるための手順をまとめた本です。問題を見える場所に出す、なぜを繰り返して原因を探す、標準を決めて守る、といった基本が、事務やサービスの例で説明されています。

1位の『トヨタ生産方式』は考え方の本で、すぐに手順へ落とすのは難しく感じるかもしれません。こちらは実践編として、人事の職場で最初に何から始めるかを決めるのに向いています。新書なので短い時間で読み切れます。

22. 採用に強い会社は何をしているか|惹きつけ、見立て、辞退させない

青田努/ダイヤモンド社/2019年

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リクルートグループに通算10年在籍し、その後Amazon Japanなどで人事マネージャーを務めた著者が、52の事例から採用の原理原則を読み解いた本です。欲しい人材を惹きつける、見立てる、辞退させない、の3つの視点で、求人の打ち出し方、面接の進め方、内定辞退の理由が扱われています。

今回のフローの後半、候補者に連絡してからMTGで説明し、アサインを決めるまでに直結する内容が多い本です。他社がどんな言葉で仕事の魅力を伝えているかを読んでおくと、MTGで話す内容を組み立てやすくなります。

23. 職場の問題地図|依頼と承認の滞りを図で整理する

沢渡あまね/技術評論社/2016年

日産自動車などを経て業務改善と組織開発の専門家になった著者が、残業が減らない、休めないといった職場の問題を、原因と結果のつながりを図にして整理した本です。「問題地図」シリーズは累計11万部を超えています。

チャットで依頼したのに返事がない、承認が止まっているのに誰も気づかない、といった問題は、一つひとつは小さく見えます。図にすると、依頼の書式がない、承認の期限がない、という根っこの原因が共通していると分かります。現場の責任者と一緒に見るのにも向いた本です。

24. カンバン仕事術|候補者のステータスをボードで見える化する

マーカス・ハマーベリ、ヨアキム・スンデン/オライリー・ジャパン/2016年

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オライリージャパン
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スウェーデンでアジャイル開発とリーンの実践を指導してきた2人が、カンバンボードで仕事を見える化し、改善するやり方を書いた本です。仕事を列に並べて流れを見える化する、列ごとに同時に抱える数の上限を決める、という基本から、チームで運用を続けるコツまでが扱われています。

ATS上で候補者のステータスを列にしたボードを作り、「連絡済み」の列に溜まる数に上限を決めると、連絡したまま放置される候補者が減ります。上限を超えたら新しい紐づけを止めて、先に返事を追いかける。そのルールの決め方がこの本で分かります。

25. いちばんやさしいDXの教本|人事の何からデジタル化するかを決める

亀田重幸、進藤圭/インプレス/2024年(改訂2版)

求人サイト「バイトル」を運営するディップで、営業のDXや新規事業を担当してきた2人が書いた入門書です。課題を決める、小さく試す、社内に広げる、という進め方が図解で説明されています。改訂2版では生成AIの活用も扱われています。

ATSやチャットを一度に全部入れ替えようとすると、現場がついてこられません。まず候補者への連絡の記録だけをATSに集める、というように一つの工程から始めて効果を確かめる。人事部門で最初の一歩を決めるための本として、最後に置きました。

読む順番の目安

25冊を全部読む前に、流れを作るために必要な順で5つに分けると次のようになります。各段階で1冊ずつ読めば、5冊でフローの骨格が描けます。

  1. 流れで考える頭を作る:『ザ・ゴール』→『トヨタ生産方式』→『リエンジニアリング革命』。部署ではなく流れでフローを見て、ボトルネックと手戻りを探す視点が身につきます。
  2. 採用の工程を知る:『採用に強い会社は何をしているか』→『採用学』→『ワーク・ルールズ!』。依頼の受付から辞退防止までの工程と、選ぶ基準の作り方が分かります。
  3. 現場と人事の分担を決める:『プロセス・コンサルテーション』→『戦略人事のビジョン』→『チームトポロジー』。ヒアリングの関わり方、承認の権限、部門の間の依頼の渡し方を決められます。
  4. 候補者を段階で管理する:『THE MODEL』→『カンバン仕事術』→『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』。ステータスの区切り方と、段階ごとの移行率の見方が身につきます。
  5. ATSで仕組みにする:『業務改革の教科書』→『システムを作らせる技術』→『DXの思考法』。フロー図の描き方、ATSの項目と承認の要件の決め方、ツールの組み合わせ方が分かります。

ATSの項目や権限をどう決めるかはATSの活用方法、段階ごとの数字の置き方は採用KPIの設計方法に具体例をまとめています。

まとめ

案件の発生からアサインまでの流れが遅いとき、原因は面接の上手下手より、依頼の受け方、承認の段数、候補者の段階の管理にあることがほとんどです。1位から7位の古典で流れを見る目を作り、8位から17位で現場と人事の分担とツールの組み合わせを決め、18位から25位の実務書で手順に落とす、という順で読むと、読んだ内容を自社のフローにそのまま写せます。

最初の1冊に迷ったら、いま一番止まっている工程を早見表で探し、その行の本から読み始めてください。止まっている工程が一つ動けば、全体の日数が目に見えて縮みます。

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現場からの依頼の受け方、承認の流れ、候補者への連絡のどこで日数がかかっているかは、会社ごとに違います。いまの流れをうかがえれば、どの工程から手を入れると早いかをお伝えします。

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