多様な人材を束ねるためには「共通の目的(組織と働く人の利益が重なる)」が必要

「人が集まっているのに、なぜか仕事が前に進まない」「チームをつくったはずなのに、担当者ごとに判断がばらばらになる」。こうした状態を考えるとき、最初に確認したいのが組織とは何かという問いです。

組織は、人数が多い集団を指す言葉ではありません。メンバーが共通の目的を持ち、その目的に向けて役割を分担し、互いの力を組み合わせて活動している状態を組織と呼びます。この記事では、組織の定義を「目的」と「協働」の二つの視点から整理し、組織開発を考える出発点を紹介します。

組織とは何か。人が集まっただけでは組織にならない

たとえば、駅のホームに100人の人が立っていたとしても、それだけで組織とはいえません。そこにいる人たちは同じ場所に集まっているだけで、共通の目的に向けて活動しているわけではないからです。

一方、同じ100人が「新しい製品を期限までに完成させる」という目的を持ち、営業、設計、製造、品質管理などの役割を分担して動いているなら、組織として機能し始めます。大切なのは人数ではなく、活動の向きがそろっているか、そして一人ではなく複数人で取り組む意味があるかです。

経営学者チェスター・バーナードは、組織を「意識的に調整された人々の活動や諸力のシステム」と説明しました。人がそれぞれ勝手に動くのではなく、相互に影響し合いながら、全体として一つの目的に向かう仕組みを指しています。

組織が成り立つ三つの条件

組織を形だけでなく、実際に機能するものとして捉えるには、次の三つの条件が手がかりになります。

条件 意味 職場で表れる状態
共通の目的 メンバーが目指す方向を共有している 何を、いつまでに、なぜ達成するのかを説明できる
貢献・協働する意欲 目的の実現に向けて自分の力を出そうとする 担当範囲を越えて必要な連携や支援を行う
円滑なコミュニケーション 情報や判断を必要な相手に伝えられる 進捗、問題、変更点が適切なタイミングで共有される

三つの条件のうち一つだけを整えても、組織は安定しません。目的が明確でも情報が届かなければ、メンバーはそれぞれ違う前提で判断します。会話が多くても、目指すものが違えば協力ではなく個別活動の寄せ集めになります。

「組む」とは、目的を共有すること

組織の一つ目の要件は、メンバーが共通の目的を持つことです。人は同じ会社にいても、働く理由まで同じではありません。生活の安定を求める人、専門性を伸ばしたい人、仕事を通じて社会に貢献したい人、仲間と成果を出すことに喜びを感じる人がいます。

個人の目的は、年齢、経験、家庭環境、担当業務によっても変化します。そのため、全員の価値観を完全にそろえる必要はありません。必要なのは、異なる目的を持つメンバーが「この組織の目的に向けて動くことが、自分の目的にもつながる」と理解できる重なりです。

たとえば、顧客の業務負担を減らすサービスを提供する会社なら、組織の目的は「顧客が本来の仕事に集中できる状態をつくること」と表現できます。営業は契約を取ること、開発は機能を実装すること、サポートは問い合わせに答えることが個別の役割です。しかし、どの仕事も顧客の負担を減らすという目的につながっていなければ、部門ごとの目標達成で終わってしまいます。

目的を共有するとは、スローガンを掲げることではありません。日々の判断で迷ったときに「この選択は、組織の目的に近づくか」と考えられる状態です。目的が行動の基準になって初めて、メンバーは同じ方向に組み合わさります。

「織りなす」とは、協働によって力を組み合わせること

組織の二つ目の要件は、協働です。一人ずつ別々に取り組んだほうが早く、質も高いのであれば、複数人が集まる必要はありません。組織をつくる意味は、役割を分担し、異なる知識や経験を組み合わせることで、一人では生み出しにくい成果を実現することにあります。

組織の要件を示す図解。共通の目的を目指すことと、一人で行うより効果がある協働の二つを示している。
組織の要件は、共通の目的を目指すことと、協働によって効果を高めることです。

ここでいう協働は、単に仕事を分けることではありません。前の工程から必要な情報を受け取り、次の工程が動ける形で渡し、問題が起きたときに関係者と解決するところまで含みます。営業が顧客の要望を開発へ伝え、開発が実現可能性を営業へ返し、サポートが利用後の声を次の改善につなげる。こうした受け渡しがつながって、組織の力になります。

反対に、担当者の境界だけを守る状態では、分業が分断に変わります。「それは自分の担当ではない」と情報を止めると、個々の業務は完了しても、顧客や組織全体の目的は達成できません。

組織の目的と個人の目的は、どのように重なるのか

組織の目的だけを強調すると、メンバーに我慢や犠牲を求める形になりやすいものです。反対に、個人の希望だけを優先すれば、チームとしての方向が定まりません。機能する組織では、組織目的への貢献を通じて、個人の目的も実現できる関係がつくられています。

そのためには、次のような問いを上司とメンバーで確認する必要があります。

  • この仕事は、組織のどの目的に結びついているか
  • 自分の役割を果たすことで、誰のどんな成果に貢献できるか
  • この組織で経験を積むことが、自分の成長や将来にどうつながるか
  • 組織の目的と個人の希望がぶつかるとき、どの条件を調整できるか

これらを一度話して終わりにするのではなく、役割の変更や事業環境の変化に合わせて見直します。目的の共有は、入社時の説明資料だけで完成するものではありません。会議の議題、評価の基準、優先順位の決め方など、日常の仕組みに表れているかを確かめる必要があります。

組織開発は、関係性と仕組みを整える仕事

組織開発という言葉を、研修やイベントのことだと考える人もいます。しかし、組織開発の中心は、メンバーが目的に向けて協働できる状態をつくることです。研修を実施しても、会議で発言できない、情報が一部の人に集中する、評価が部門ごとに分断されているといった問題が残れば、行動は変わりません。

見直すべき対象は、たとえば次のようなものです。

  • 組織の目的が、現場の判断基準まで具体化されているか
  • 役割と責任の境界が明確で、必要な協働を妨げていないか
  • 問題や違和感を早い段階で共有できる場があるか
  • 目標や評価が、部門の都合ではなく組織目的とつながっているか
  • 個人の成長と組織への貢献が両立する仕事の任せ方になっているか

組織の不調は、個人の能力不足だけで説明できないことがあります。目的が曖昧で、情報の流れが滞り、協働のルールがない状態では、優秀な人がいても力を発揮しにくいからです。誰かを責める前に、組織の条件がそろっているかを点検すると、改善の糸口が見つかります。

組織の目的や人事の考え方を社内で整理するときは、会社のミッションから人事の原理原則をつくる方法も参考になります。人を採用し、育て、配置する判断を、組織が目指す方向と結びつけるための視点です。

組織開発をさらに学べる一冊

今回取り上げた「組織とは何か」「共通の目的とは何か」という考え方を、図解で体系的に学べるのが、坪谷邦生さんの『図解 組織開発入門』です。組織開発の基本から、学習する組織や対話、組織づくりの実践まで、100のツボに分けて整理されています。

組織の状態を感覚だけで捉えず、目的・関係性・仕組みのどこに課題があるのかを考えたい人に向いています。

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組織の目的を実現するには、採用、役割分担、面接、業務の受け渡しなど、複数の工程をつなげて考える必要があります。現状の課題をうかがい、どこから整理するとよいかを一緒に考えます。

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まとめ

組織とは、ただ人が集まった状態ではありません。共通の目的を持ち、役割を分担し、コミュニケーションを通じて協働する集団です。

組織開発を始めるときは、制度や研修を先に増やすのではなく、まず「何を目指す組織なのか」「なぜ一緒に取り組む必要があるのか」を確かめます。目的が共有され、個人の目的とも重なり、互いの力を組み合わせられる状態が、組織の土台になります。

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